【武器のための戦争】
それなのに、西側のメディアではそんなことはまったく報道しないで、まるでウクライナ中が相変わらず戦場になっているかのような印象を与えている。この戦争では、初めから西側メディアが伝える情報と現地から来る情報とが激しく違っていたのだけれど、ここに来て、その違いのあまりの大きさに、開いた口がふさがらないほどだ。
被害に遭った人たちは、「ウクライナのナチが私たちを閉じ込めていた」とはっきり言っているのに、そこのところをカットして、「外では爆音がし続けていて、外に出られなかった。もう死ぬんじゃないかと思った」と言っているところだけを出して、まるでロシア軍に攻撃されていたかのように報道していたのだ。
ロシアに住むドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーは、5月3日付の彼のニュースサイトで、ロシアのメディアに出ているオリジナルのインタビュー動画をドイツ語に翻訳して、ドイツのメディアで報道された動画とどこが違うのかを見せていた。その人が言った言葉はそのとおりにドイツ語に翻訳されているのだけれど、攻撃しているのがウクライナ軍だとわかるような箇所をすべてカットして使っていたのだ。そこに、ロシア軍の攻撃が続いている、というアナウンスと戦闘の映像が入り、見ている人は、当然ロシア軍の犠牲になっていたのだろうと思い込んでしまう。
そのことで、ドイツ人ジャーナリストのヨルク・ヴェルブロックが、ロシア語通訳者を通してマリアナさんにインタビューした1時間ほどの動画が5月3日に出ている。それによると、彼女はロシア軍に連行されたとか脅されたとかそんなことは一切ないし、そんな風に言われていることさえ知らなかったような様子だった。西側メディアでは、彼女があとで「あれはロシア軍に脅されて言わされたことでした」と告白したという話になっていたらしい。そのことを聞かれて、「そんなことは一度も言っていません」とびっくりしたような顔をして言っていた。
ということは、アゾフ連帯が妊婦たちを追い出して産院に陣取っていたのを、ロシア軍が爆撃したということなのだろう。それがおそらくは7日までに起こっていたことで、それをあとからロシアが妊婦や新生児がいるところを攻撃したことにするために、9日に産院を砲撃して、妊婦たちを避難させ、それを撮影してメディアで大々的に報道させていたのだ。つまり、反ロシア感情をあおるのに使うために、自作自演したわけだ。