あるCAのお話

日本人だと言うと急に優しくなる外国人
あるアラブ系の航空会社に勤務するCAからの逸話

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米ボストンのダウンタウンにて。提供:執筆者© SankeiBiz 提供 米ボストンのダウンタウンにて。提供:執筆者
SankeiBiz読者のみなさんにだけ客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第129回は中東系航空会社乗務2年目の長井馨子がお送りいたします。

私はフィンランドの航空会社でCAとして働いた後、現在は中東の航空会社でCAをしております。今回は、130カ国以上から集まるクルー達と一緒に働き、世界中の多種多様なお客様と接する中でおそらく「日本人CAあるある」であろうと思うトピックをお伝えします。

「日本人だ」というと急に態度が変わる

「日本人」であることを知ると、基本的に外国人クルーの態度が優しくなります。時には、先ほどまでツンとしていたクルーの性格が180度変わったかのようにフレンドリーになることも。

とあるフライトでの出来事です。フライトの前半では個人プレーだったアラブ人CAとサービスが落ち着いた後に話をしていました。

「どこの国出身なん?」と聞かれ「日本だよ」と答えると、「え?! 日本なの?! アイラブジャパーン!」と彼のテンションが急上昇。フライトの後半では、前半とは別人かのように優しく、献身的に手伝ってくれるようになったのです。

このように、中東系の会社に勤務している現在も、世界中で親日の人が多く、日本人に対して信頼感を寄せてくれていることを肌で感じています。

余談ですが、日本のお菓子が好きなクルーも多いです。たまに怖そうな上司と働く時は日本のお菓子をさしあげると若干優しくなります。そのため、日本のお菓子は常に常備しています(笑)

人気の日本線…外国人クルーがなかなか割り当てられないワケ

現在弊社は、日本便として成田国際空港関西国際空港に就航しているのですが、日本線は弊社CAの中でも大人気かつ外国人クルーはなかなか担当させてもらえない激戦路線です。

日本線は会社の中でも特別な路線で、「日本語スピーカー6人乗務」という規定があります。日本以外の路線では、就航先の言葉を話せる人がいれば良いのですが、日本線だけは、日本語・日本文化を考慮した上で日本語スピーカーが必要とされています。

「10年弊社CAをやっていて一度も日本線に就いたことがない」という外国人クルーの嘆きもたまに耳にします。

日本人だと分かった瞬間、求婚されることもしばしば

日本人だと分かった瞬間に他国クルーから求婚されることもあります。日本人CAの同僚にこのことを話すと共感してくれたので“日本人クルーあるある”なのかもしれません。私が経験した「プチ求婚エピソード」をご紹介します。

フライトが終わり、現地ホテル行きのバスに向かって歩いている中、アラブ出身男性CAと話していて「日本のパスポートは世界一強いらしいよ」と言うと、「えっ、今独身?」「良かったら結婚しない?」と急展開プロポーズを受けたのです。

パスポートを狙って求婚される日が来るとは…。渡航前には想像できなかったような経験ができました。

日本人だからこそ苦労することも…

日本人として得することばかりではなく、文化の違いで苦労することもあります。海外で働く中で日本人だからこそ衝突する壁、それは「主張性」です。友人のエピソードを1つ借りてお伝えします。訓練中、クラス17人の中で日本人が6人いました。教官から3人1組で呼ばれ、教官と現在まで経過について面談をする時間が設けられました。

クラスメイトたちは国籍がバラバラで面談に呼ばれるのに、なぜか日本人3人で面談に来るよう言われました。3人で教官の待つ部屋に入ると、教官から一言「あなたたちの共通点が分かる?」と尋ねられました。

共通点といえば3人全員が日本人であること。そしてもうひとつの共通点は「授業中に静かすぎる」こと。3人は「もっと発言を沢山しているクラスメイトたちを見習いなさい」と指摘され“撃沈”させられたそうです。

日本では「協調性」を大切にする文化がありますよね。学生の頃の授業でも、クラスの進行は妨げず終わった後に質問をするのが良いと考えていました。その習慣が私たちには染み付いていることを改めて感じた瞬間でした。

海外では「主張性」を大切にする国が多く、訓練の授業や仕事中の話し合いでも発言することが大切です。

苦手だった日本の「気遣い文化」「空気を読む文化」

日本で暮らしていた頃、「空気を読む」「気遣い」の文化が正直、苦手でした。自由を制限されているような苦しさを感じていたのです。

しかし、世界のあらゆる文化が集まった中東系エアラインで働く中で、日本独特の「気遣い文化」や丁寧さが外国人クルーやお客様から評価されることに気づきました。お褒めの言葉を頂くことも多いです。

中東の航空会社に入って、約130カ国以上から集まる人の中で過ごし、苦手だと思っていた日本独特の文化の美しさと素晴らしさを再発見できて嬉しく思います。

個人的な印象ですが、弊社で働く日本人CAには、協調性を大事にしつつも自分の意見を主張できる人が多いようです。

常識のない世界

多国籍な環境で働くということは、「常識のない世界」で働くことです。日本に住んでいた時に常識だと思っていた物事も他国から見ると全く逆の場合があります。この多国籍な環境で働く中、今まで自分が考えていた常識が日々覆され、自身の世界の見方・物事の見方が広がっていくことに面白みを感じています。

そしてこの環境下で日本人として働くことで、「いかに自分に日本文化が染みついているか」に気づかされ、「日本独特の文化の素晴らしさ・誇らしさ」を感じています。

中東の航空会社は、世界中から集まった人たちと世界中に飛び、世界中のお客様と接することができます。そのような会社のCAとして働くからこそ「外から見る日本の素晴らしさ」に気づけたのかもしれません。

長井馨子(ながい・かおるこ)

大学在学中にオーストラリアで10カ月語学留学。大学卒業後は、フィンランド航空に就職。ヘルシンキに住みながら1年半勤務。現在は中東系航空会社に転職、ドバイを拠点とし国際線CAとして乗務2年目。休日は健康維持のためジム、スケートボードなど運動することを心がけている。