一推し遠藤誉教授の解説です。視点が他とは一味も二味も違い網羅されている。真実はどこから切り込んでも同じところに点を結ぶ。
スイス平和エネルギー研究所が暴露した「ウクライナ戦争の裏側」の衝撃 世界は真実の半分しか見ていない
遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
5/31(火) 13:44
◆スイス平和エネルギー研究所のガンザー所長が語るウクライナ戦争:真実の裏側
2022年4月12日、スイス平和エネルギー研究所の所長であるダニエル・ガンザー博士がRubikon.newsに寄稿し、「8年前のオバマ大統領の国際法違反がなければ、プーチンの違法な軍事侵攻はおそらく起こらなかったでしょう」と語った。
動画のタイトルは<ガンザー博士が語るウクライナ紛争:真実の裏側>で、日本語字幕が付いているので、非常にわかりやすい。
なぜ、この動画にたどり着いたかというと、実は映画監督オリバー・ストーンのトークを見て、彼がドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイヤー』を制作していたことを知ったからだ。ところがこの映画は、「あまりに真実を語っている」ことからか、アメリカ政府が妨害して見られないようにしているため、規制がかかってなかなかアクセスできない。さまざまなルートがあり、こちらももアクセスしたが、うまくいかない。民主主義国家のはずなのに、偏った事実しか知らせず、もう一方のアメリカ政府にとって都合の悪い事実は知られないようにするという、まるで中国大陸のようなやり方だ。
そこで若手のパソコンに強い人にお願いしてやっとたどり着いたのが、このスイス平和エネルギー研究所の動画である。何時間もかけてようやく文字起こししたのだが、よくよく見ると動画の下に文字による解説があった。しかしせっかくなので、自分で文字起こししたものも参考にしながらガンザー所長が何を語っているかを、概略をご紹介したい。
◆ウクライナ戦争の出発点
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領は軍隊にウクライナへの侵攻を命じたが、これは国連の暴力禁止規定に違反するため違法だ。一方、そのほぼ8年前の2014年2月20日、アメリカのバラク・オバマ大統領は、ウクライナをNATOに引き込むためにウクライナ政府を転覆させた。このクーデターがウクライナ戦争の出発点だ。
プーチンの侵略と同じように、オバマの行動は国連の暴力禁止に違反し、したがって違法だ。現在、メディアではプーチンの侵攻について多く報道され、正しく批判されている。しかし、オバマのクーデターについては、ほとんど報じられていない。なぜ、物語の半分しか語られないのか?
ガンザー所長の著作『違法な戦争(ILLEGAL KRIEGE)』でもウクライナのクーデターについて述べている。「欧米が主導したクーデターであることは間違いない」と、元CIA職員のレイ・マクガバンは認めている。
◆NATOの東方拡大
2013年末、ウクライナの首都キエフの中央広場「マイダン」では、ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領とニコライ・アザロフ首相の政権に反対するデモが行われていた。元ボクシング世界チャンピオンとして有名なビタリ・クリチコがデモを主導し、米国と緊密に打ち合わせた上で扇動的な演説をした。この緊迫した状況の中、米国の有力上院議員ジョン・マケインがウクライナに飛び、2013年12月15日、クリチコとともにマイダンの抗議者陣営を訪問した。米国の上院議員がデモ隊にウクライナ政府転覆促した。
もし、ロシアの有名な国会議員がカナダに飛び、首都オタワでカナダ政府を転覆させようとするデモ隊を支援したら、米政府はどれほど怒り狂うだろうか?
米国はまさにそのようなことをウクライナで行ったのだ。
◆駐キエフ米大使館が抗議行動をコーディネート
マイダンのデモのリーダーたちは、米大使館に出入りし、そこで指令を受けていた。一部のデモ隊は武装しており、警察に対して暴力を行使した。キエフの米大使館では、ジェフリー・パイアット米大使がデモ隊を支援し、ウクライナの不安定化を進めた。パイアット大使は、元ボクサーのクリチコと直接コンタクトをとっていた。マイダン広場の組織化されたデモはどんどん大きくなり、キエフの緊張は高まっていった。バイデン米大統領もマイダンのデモを支持し、クーデターに直接関与していた。2013年12月、当時オバマ政権下で副大統領だったバイデンは、夜中にヤヌコビッチ大統領に電話をかけ、「警察がマイダンの群集を排除したら、ただでは済まないぞ」と脅した。その後、ヤヌコビッチは予定していた排除行動を撤回した。
◆ビクトリア・ヌーランドの50億円
米国務省でクーデターを担当していたのは、ビクトリア・ヌーランドだ。ヌーランドはブカレスト首脳会議で合意されていたように、ウクライナをNATOに加盟させるため、アザロフ首相とヤヌコビッチ大統領を引きずり落とそうとしていた。マイダンのデモの指導者たちは、米大使館から指令を受けただけでなく、報酬も受けていた。2013年12月、ヌーランドは講演で「我々はウクライナの民主主義を保証するために50億ドル以上を投資してきた」と語った。これには、元米下院議員のロン・ポール氏など、米国でも批判が出た。ウクライナのデモ隊の中にお金をもらっている人がいることは、当時公然の秘密だった。米国の大富豪ジョージ・ソロスのように、革命に資金を提供する人たちがいた。(会話録音に関しては省略した。)
2月末、マイダンの状況がエスカレートした。2014年2月20日、正体不明の狙撃手が複数の建物から警察官やデモ隊に発砲し、40人以上の死者を出すという大虐殺が発生し、状況は混乱した。ただちに当時のヤヌコビッチ政権とその警察組織は虐殺の責任を負わされたが、彼らには事態をエスカレートさせることに何の得もない。彼らとしては政権の転覆を避けたかったからだ。
しかし政権打倒を目指していたボクサーのビタリ・クリチコはドイツのタブロイド紙『ビルト』に「国際社会は独裁者が国民を虐殺するのを傍観していてはならない!」とコメントし、政権転覆は成功した。ヤヌコビッチ大統領は失脚し、ロシアに亡命した。その後、億万長者のペトロ・ポロシェンコが大統領に就任し、ウクライナをNATOに導くと即座に宣言。
◆プーチンがクーデターについて語る
◆クリミアの分離独立
◆ドンバスの分裂
キエフのクーデターとクリミアの分離独立後、ウクライナは内戦状態に陥った。新首相のヤツェニュク氏は、軍、諜報機関、警察の力で国全体を支配下に置こうとした。しかし、兵士、警察、シークレットサービス関係者は必ずしも全員がクーデター政府の指示に従ったわけではない。ロシアと国境を接するウクライナ東部のロシア語圏では、ドネツク地区とルガンスク地区がキエフのクーデター政権を承認しないことを宣言した。「分離主義者たちは警察署や行政庁舎を占拠し、新政府は不法に誕生したものであり正統性がない」と主張した。
ヤツェニュク首相はこれに激しく反発し、分離主義者はすべてテロリストであると断じた。CIA長官ジョン・ブレナンはクーデター実行者に助言するためにキエフに飛んだ。2014年4月15日、ウクライナ軍は米国の支援を得て「対テロ特別作戦」を開始し、ドネツク地区のスラビャンスク市を戦車や装甲兵員輸送車などで攻撃した。
キエフでのクーデターは、プーチンのウクライナ侵攻を正当化するものではなく、それが国際法の侵犯であることに変わりはない。しかし、私たち西側諸国が2014年のクーデターを無視するならば、ウクライナ戦争を理解することはできないだろう。
(ここまでがガンザー所長の分析の紹介。キエフなどは原文のママ)
◆基本軸で合致していた筆者の見解
このような動画を初めて見て驚き、激しい衝撃を受けた。
真実はどこから斬り込んでも同じところに点を結ぶ。
日本はこの真実から目を逸らし、戦争に向かってまっしぐらに進もうとしていることに気が付いているだろうか?
今般のアメリカの対応を見れば、日本は自国の軍事力を強化する以外にないのは明らかだ。しかし、日本がどの文脈の中で戦争に巻き込まれようとしているのか、その真相を日本国民は自分自身のために直視しなければならないと思う。
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士